2008年2月3日日曜日

コーヒーとWLANの関係


 WLAN、言わずと知れた無線LANのことだが、ドイツ語では「ヴェーラン」と発音する。ベルリンでもWLANを設置する公共施設がちらほらと出てきた。テーゲル空港にもWLANが開設されたということで先週行ってみたが、残念ながら有料。しかも私のアップルコンピューターでは、そのトップ画面にすらアクセスできなかった。WLANを設置と言っても、だれも「無料」とは言ってない。以前、日本からの旅の途中で、ミュンヘンに寄ることがあり、インターネット接続が可能という条件でホテルをとったのだが、部屋に入ってから有料だとわかって驚いた。でもこれがドイツ。自分の利益は自分で費用を負担すべし、なのだ。
 しかし例外もある。この記事は、ベルリンのU8 Rosenthaler Platz(ローゼンターラープラッツ)駅の交差点にあるカフェSt. Oberholz(Rosenthaler Str. 72 A, 10119 Berlin, Germany)で書いているのだが、ここはお客にWLANを無償で解放している。このセルフサービスの喫茶店は1階、2階と席が設けられており、板張りの床などは凝って設えたのかと思わせるものもあるが、調度などは、どれも不揃いで拾ってきたような椅子やテーブルが並ぶ。それがベルリンらしい雰囲気を出しているとも言えるが、ここの売りはやはりWLANということなのだろう。これだけ繁盛していれば、追加投資の意欲も削がれるということか。
 私が訪れた日曜日の昼下がり、シャルロッテンブルク地区の住宅街の喫茶店なら、午後のお茶を楽しむ家族連れや老夫婦がぽつりぽつりとテーブルを占めているところだろうが、ここは若い人でほぼ満席。それもほとんどがノートコンピューターを持ち込んでいる。私の座っている席も相席で向かいには若い女の子が4人座って、パソコン画面をのぞきならが何やら相談事の真っ最中。大学の宿題でもやっているのだろうか、あるいは就職活動にでも話が進んでいるのか。Arbeitsgeberがどうのこうの、という話が聞こえてくる。
 この喫茶店がある地区はミッテ地区というが、学生をはじめ若者に人気の界隈。留学生や外国人観光客も多い。この喫茶店を訪れるのは、そんな、この地域の住人だろうが、彼らの中には部屋に固定電話を持っていない者も多いようだ。申し込みから接続工事、電話局での回線設定を経てようやく接続という手間を嫌って、携帯電話だけで過ごしている人も多い。申し込んでから、ときには1月以上も待たされる固定電話の接続を待っていたら、彼らの短い滞在期間は、かなりの時間が電話なしで過ぎてしまうし、支払に当座預金口座が必要となれば、手間は一層増え、解約の手間も馬鹿にならない。モバイルな彼らにとっては、携帯電話さえあればそれで十分なのだろうが、唯一足りないのがインターネットへの接続。そんな条件が、この店を繁盛させているのだろう。
 ちなみにここのコーヒーは1.70ユーロ、私の注文したアップルケーキは2.80ユーロだった。高くはないし、コーヒーの味はまずまずだが、ケーキの方は随分と堅くフォークを入れるのに力を要した。
 インターネット接続が可能ということで、お客の回転率が悪くなりそうだが、どこのテーブルも相席で埋まっているとなれば、集客で回転率の悪さを相殺できる。それに訪れるのはアクティブな若者たち。長っ尻といっても限度がある。
 惜しむらくは、電源を取れるコンセントが少ないということか。もっともどこのテーブルにもコンセントがあったりすると回転率を余計悪くするだろうから、これくらいが限度ということだろう。使われているコンピューターは「リンゴ印」が多かった。

2008年1月13日日曜日

ドイツ-ポーランド国境にBTLプラント建設

 近年、世界的バイオ燃料ブームが起きている。バオイディーゼルやバイオエタノールといった自動車用燃料が、農作物から持続的に生産され、自動車から排出される二酸化炭素の量だけ、作物が空気中から二酸化炭素を取り込むので地球環境にも優しい、なんて聞けば夢の燃料のように聞こえるが、問題も多いことも確か。
 中でも燃料用作物の生産と食糧生産との競合は深刻な問題で、燃料用作物の流通が世界的に活発になり、そうでなくても燃料生産目的で食糧作物栽培地が燃料用のそれに転換されれば、食糧生産も十分ではない世界の最貧国の住民から、食糧を奪ってしまうことにもなりかねない(参考:天笠啓祐『バイオ燃料 - 畑で作るエネルギー』(コモンズ、2007年))。いや、このところの、うちの近所に並ぶ食料品の値上がりを見ると、工業国に住む自分の生活をも脅かしかねない問題だ。

 この問題をどこまで解決できるかどうかは未知数だが、BTLと呼ばれる第二世代のバイオ燃料は、食糧生産との競合を回避する手段として期待されている。BTLとは「Biomass to Liquids」の略で、この手法を使用すれば、麦藁や稲藁、森林間伐材、木質廃材といった食糧としては用いられないバイオマスを使っての燃料生産が可能になる。

 日本では大阪府堺市(バイオエタノール関西)が2007年1月に既に稼働しているが(前掲書)、新聞報道によるとドイツでもChoren社によるBTLプラントが、ブランデンブルク州東部、ポーランドとの国境ともなっているオーデル川の河畔に位置する工業都市シュヴェート(Schwedt)に建設されることになった。計画によると、このプラントは5年以内に年間20万トンの合成バイオ燃料の生産を開始する。
 Choren社が、この地を最初のBTLプラント建設地として選んだのは、国境を接するポーランドからの原料供給を期待してのことだと新聞記事は報じている。この地域はドイツでも最も失業率の高い地域で、雇用創出も期待されているが、プラントが稼働を開始すれば100〜125人分の雇用が直接に発生し、さらに農林業や運送業で少なくとも600の雇用が生まれる(FAZ、2008年1月8日)。

 ベルリンから列車で北へ向かうと、松の植林が目立つ。それらの間伐材の利用も期待できるのだろか。

参考リンク:Choren社プレスリリース(2007年12月18日)

2007年7月25日水曜日

エミレーツは着陸せず

 Die Welt(ディー・ヴェルト)オンラインによると、ドバイを拠点とするアラブ首長国連邦の航空会社エミレーツ航空のベルリン乗り入れが、連邦交通省によって阻まれた。
 エミレーツ航空は、現在ハンブルク、デュッセルドフ、フランクフルト、ミュンヘンに乗り入れており、さらにベルリンとシュツットガルトへの乗り入れを希望していたが、交通省はそのための権利を与えなかった。ただし現在の週49便の範囲を超えないのであれば、交渉の余地は残されているとのこと。
 このような連邦サイドの決定に対し、ベルリンサイドでは乗り入れが実現しなかったことに落胆している。ベルリンでは、ベルリン・ブランデンブルク国際空港(BBI)を建設中であり、インフラの整備だけでなく、エミレーツ航空の乗り入れによって極東やアフリカへの国際航空網への接続を果たしたいところだろう。
 現在のところ、ベルリンから最も近いエミレーツ航空の寄港地はハンブルク。ベルリンからハンブルクまでは鉄道を使って1時間30分で結ばれている(両中央駅間)。

2007年7月12日木曜日

ベルリンの家賃上昇中

 7月11日、ベルリン州都市開発省は、2007年版の「ミートシュピーゲル (Mietspiegel)」を発表した。Mietspiegelとは、家賃を意味する「ミート (Miet)」と鏡を意味する「シュピーゲル (Spiegel)」の合成語。つまり家賃の状況を映し出す鏡、漢語風に訳せば「家賃鑑」ということ。ちなみにドイツの有名な雑誌に「デァ・シュピーゲル」があるが、その「シュピーゲル」と同じ。
 この鑑(かがみ)は、ベルリンの家屋や環境の状況を映し出し上-中-並の三段階で対象物件を評価しているが、これまで家賃が比較的安いとされてきたクロイツベルク地区や若者の街プレンツラウー地区の一部で従来の並から中に格上げされたところがある一方で、郊外の新興住宅地、例えばシュパンダウ地区のシュターケンや、旧東ベルリンの高層アパートのうち改修が済んでいないもの、例えばティアパーク近くのものなどが、中から並に格下げになった。格下げの理由には、住宅の密度の上昇や改修が必要な時期にさしかかっているといったことがある。
 この評価は、管理運営費や暖房費を除く家賃を決定するときの参考にされること多く、家主が家賃引き上げを決めたり、あるいは住民がそれに反対する際の根拠として利用される。ドイツ中世の代表的な法律集に「ザクセン-シュピーゲル」という「シュピーゲル」があるが、ベルリンの「家賃シュピーゲル」も一種の規範として機能しているようだ。
 気になる家賃だが、並評価の家屋の家賃の平均が1平方メートルあたり4.44 EUR、中が4.80 EUR、上が5.30 EUR。全体の平均が4.75 EURだそうで、これは年0.13 EUR(2.9%)の上昇という結果になった。住民にとっては有り難くない話だが、ハンブルクの6.26 EURやミュンヘンの9.30 EURに比べればベルリンはまだまだ恵まれている。
 「ミートシュピーゲル」は、州都市開発省のHPからダウンロードでき、色分けされて見ることができるので、ベルリンに移住あるいは不動産投資を考えている方は、参考にされてはいかがだろうか。

参考リンク:ベルリン州都市開発省のHP(ミートシュピーゲルもここからダウンロード可能)

2007年7月11日水曜日

Puerto verde:ケーペニック地区のウォーターフロント開発

 新聞報道によるとケーペニック地区のウォーターフロントに運河を引き込み、ヨットハーバーを備えるなど、水とのふれあいを楽しめそうな住宅開発の予定があるそうだ。現在「Puerto verde(緑の港)」と呼ばれているメーアマングループ (Meermann-Gruppe) の開発計画がそれだが「ケーペニック」と聞いてピンと来るのは、よっぽどのベルリン通かドイツ文学者くらいだろう。
 ケーペニック地区は、旧東ベルリンの東南に位置し、ベルリンを貫流するシュプレー川やムッゲルゼー湖を擁する緑豊かな地区でベルリンの都心へは電車で30分ほど。東ベルリンの住宅地と言うと社会主義の高層アパートが建ち並ぶ殺伐とした団地を思い浮かべるが、この地区は一戸建ての郊外型住宅や別荘のような建物も多い。西ベルリンにはツェーレンドルフという郊外型高級住宅地があるが、その東ベルリン版と言うと少しはイメージが思い浮かぶかもしれない。
 ちなみにドイツ文学者の間では、「ケーペニック」はカールツックマイヤーの戯曲「ハウプトマン・フォン・ケーペニック」で有名だが、これは失業中の靴職人が大尉の制服を着て大尉に成り済まし、ケーペニックの役場の金庫を開けさせたという実話をもとにしており、その場所がケーペニックだったというわけだ。
 閑話休題。
 ウォーターフロント開発の話に戻るが、この計画はRegattastraße(レガッタシュトラーセ通り)とダーメ川に挟まれたかつての敷地に400戸の集合住宅を建設する予定だが、この敷地はかつて化学工場によって利用されていたことから、現在土壌、水質汚染の状況が審査されている。完成すれば敷地には深さ80センチメートルの堀が作られ、水が引き込まれて水郷の様相を呈することになる。
 ここは現在拡張工事が進められているシェーネフェルト空港(ベルリン・ブランデンブルク国際空港(BBI))や研究学園都市アドラースホーフにも近く研究者や専門労働者の入居も見込まれる。ちなみに分譲価格は25万ユーロからというところだそうだ。

参考リンク:ノイ・ヴェネディッヒ(ケーペニック地区の一例)、レーニン像はどこへ行った?(ケーペニック地区にはこんなものも埋まっている)

2007年7月9日月曜日

フランクフルトで太陽電池工場オープン

 「フランクフルト」と聞いて日本人が思い浮かべるのは、まずはソーセージ、そして次に金融と空港の街フランクフルト・アム・マインといったところだろうか。
 この記事の「フランクフルト」は、それらではなくポーランドと国境を接するブランデンブルク州の都市フランクフルト・アン・デア・オーデル。「フランクフルト・アム・マイン」がマイン川河畔のフランクフルトという意味なら、こちらはオーデル川河畔のフランクフルトという意味。
 国境という意味では国際的と言えなくもないこの街だが、むしろ地方都市的な性格の強い都市。その街で今、ちょっとしたソーラーブームが起こっている。今年4月末に稼働を開始したオーデルサン株式会社 (Odersun AG) の薄層フレキシブル太陽電池工場に続いて、この程米国のファースト・ソーラー社 (First Solar) の工場がこの街にオープンした。同工場は、すでに400人の従業員を雇用し、低価格のソーラーモジュールの製造を開始する。この工場から出荷されるモジュールはザクセン州ブランディス (Brandis) に建設される世界最大級の太陽発電所にも供給されるということだ。
 この他、数週間後にはハンブルクのコネルギー株式会社 (Conergy AG) のフランクフルト工場でも太陽光発電モジュールの製造が開始される予定だ。

2007年7月2日月曜日

ミッテ地区で駐車料金値上げ

 7月1日よりミッテ地区の路上駐車料金が値上げされた。現在赤、黄、緑の三色で駐車ゾーンが色分けされているが、1日より15分の駐車でそれぞれ75、50、25ユーロセントが徴収されることになった。つまり1時間あたりの駐車料金はそれぞれ3、2、1ユーロということになる。
 最も高い「赤料金」は、これまでのポツダム広場に加えて、アレキサンダープラッツ(広場)、フリードリヒシュトラーセ(通り)、ウンター・デン・リンデン通り、ジャンダルマンマルクト(広場)で徴収される。さらに2008年にはレギールングスフィアテル(行政地区)、中央駅、トアシュトラーセ(通り)北側もこれに加わる予定だ。
 このようなパーキングメータによって徴収される路上駐車料金の値上げは、民間駐車場には売り上げ上昇のチャンスだが、商工会議所は客足を遠のかせるとして反対の立場を表明している。ちなみにウンターデンリンデン通りに隣接する民間駐車場の料金は1時間1.60ユーロ。東京に比べればまだまだ安い。